海外にお住まいの患者様から、このようなご相談をいただくことがあります。
「自分の病気は日本で治療できるのだろうか」
「今受けている治療について、日本の医師の意見も聞いてみたい」
「日本まで行って、希望する治療を受けられなかったらどうしよう」
私は株式会社AJSで、日本の医療を希望される海外の患者様と、日本の医療機関をつなぐ仕事をしています。日々さまざまな国の方からご相談をいただく中で、こうした不安や疑問を抱くのは、決して不思議なことではないと感じています。
今回は、患者様が来日する前にできること、そして国境を越えて医療相談を行う際に大切にしたいことについて、私が今考えていることをお話しします。
「日本で治療できるだろうか」──海外から届く相談の声

医療渡航には、時間的にも経済的にも、そして身体的にも大きな負担が伴います。渡航のために仕事やご家庭の予定を調整し、航空券や滞在先を確保したうえで、慣れない環境の中で診療を受けなければなりません。
十分な情報がないまま渡航を決めてしまうと、来日してから「思っていた治療と違った」「希望していた治療の対象ではなかった」ということにもなりかねません。
だからこそ患者様は、渡航を決める前の段階で、「日本で本当に治療を受けられるのか」「日本まで行く意味があるのか」を知りたいと考えています。私たちAJSは、こうした患者様の不安に、来日前から向き合える仕組みが大切だと考えています。
日本に来る前にできることは、もっとあるのではないか

海外から日本の医療を希望する方にとって、オンラインで日本の医師に相談できることは、医療の選択肢を考えるうえで大きな助けになる可能性があります。
例えば、現在受けている治療について別の視点から情報を得ること。日本の医療機関ではどのような診療が行われているのかを知ること。手元にある診療情報や検査画像から、来日前に確認できる範囲を整理することです。
もちろん、オンラインだけですべてを判断できるわけではありません。触診や検査が必要な場合もありますし、相談内容によっては現地や日本での対面診療が欠かせません。
それでも、適切な相談の機会があれば、患者様が十分な情報を得て、納得して次の一歩を考えることにつながるのではないでしょうか。私は、医療渡航において大切なのは、ただ日本に来ていただくことではなく、患者様がご自身にとって適切な医療を選択できることだと考えています。
日々のご相談で見えた「来日前」と「帰国後」の空白

私のもとには、台湾、インドネシア、香港、中国などの患者様から、日常的にご相談が寄せられています。その中で、何度も向き合ってきた二つのケースがあります。
一つは、日本での治療を希望しながらも、仕事やご家庭の事情で来日のスケジュールが確定できず、そのまま時間が過ぎてしまうケースです。治療を考えるうえで大切な時間が、何も進まないまま経過していく。そのもどかしさを、私も患者様と一緒に感じてきました。
もう一つは、来日して日本で治療を受けた患者様が、帰国後も継続して日本の医師に相談したいと強く希望されるケースです。治療を終えて帰国したあとも、患者様の不安や疑問は続いています。
来日前と帰国後は、どちらも患者様が日本の医療とつながりにくくなる時期です。この期間にも相談できる機会があれば、患者様はもっと安心して治療に向き合えるのではないか。こうした経験が、国境を越える医療相談について考えるきっかけになりました。
海外にお住まいの患者様・ご家族様へ
日本での受診をご検討中の方は、まずは現在の状況をお聞かせください。来日の時期がまだ決まっていない段階でのご相談も承っています。
国境を越える医療相談に必要な慎重さ

一方で、国境を越える医療相談には慎重さも必要です。オンラインで相談できるからといって、どのような医療行為でも自由に行えるわけではありません。
日本では、2026年4月に医療法等の改正が施行され、それを踏まえて厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」も改訂されました。
この指針では、診察・診断を行い、診断結果の伝達や処方などをリアルタイムで行う「オンライン診療」と、相談者の個別の状態を踏まえた具体的な診断を伴わない「遠隔健康医療相談」などが区別されています。一般的な医学情報をお伝えすることと、個別の病状を診断して治療方針を判断することには、重要な違いがあります。
さらに、海外にお住まいの患者様との相談では、提供する内容、医師と患者様の所在地、対象国の制度などを確認する必要があります。患者様の安全を守るためにも、日本の法令だけで判断せず、実施前に関係機関や専門家へ確認することが欠かせません。
オンライン相談は便利な手段ですが、対面診療の代わりになるとは限りません。できることとできないことを患者様へ分かりやすく説明し、必要な場合は速やかに適切な対面診療へつなぐことが大切です。
受入れを支える「医療以外」の仕組み

海外の患者様を実際に受け入れるには、医療そのもの以外にも、さまざまな準備が必要です。
- 言葉の壁を補う医療通訳・翻訳
- 診療情報や検査画像を安全に共有する方法
- 国をまたいで扱う個人情報の保護
- 見積もりや診療費の事前決済
- 現地の医療機関や帰国後の診療先との連携
どれか一つが整っていないだけでも、医師や医療機関に大きな負担がかかります。問い合わせのたびに担当者が一から判断する状態では、通常診療との両立も難しくなってしまいます。
医師が医療に専念できるよう、相談窓口、情報共有、通訳手配、予約、決済、来日前後の連絡を一つの流れとして整えることも、医療渡航を支える私たちの重要な役割だと考えています。
外国人患者の受け入れを、無理なく始めたい医療機関様へ
AJSでは、通常診療への負担を抑えながら、外国人患者の受け入れ体制づくりを、設計から導入・定着まで伴走支援しています。専用ページでは、具体的な支援内容や導入の流れをご紹介しています。お問い合わせいただいた医療機関様には、受け入れ準備に役立つ「17項目チェックリスト」を含む資料もご用意しています。
距離を感じさせない安心と信頼を

私たちが目指しているのは、日本の医療を海外へ広げることだけではありません。
患者様にとっては、十分な情報を得て、納得して医療を選択できること。医療機関にとっては、安全で無理のない体制のもとで、専門性を生かした医療を提供できること。その両方が実現してこそ、医療渡航には本当の価値が生まれるのだと思います。
そのために、AJSは医療機関の皆様と一緒に、来日前の相談体制、医療情報の共有、受診に至るまでの手続き、帰国後の連携など、一つひとつの課題に向き合っていきたいと考えています。
医療機関の皆様が抱える不安や負担にも耳を傾けながら、現実的で続けていける受入れ体制をつくっていくこと。そして、その先にいる患者様が、安心して医療に向き合えること。
国境を越える医療だからこそ、距離を感じさせない安心と信頼をつくっていきたい。それが、AJSの大切にしている思いです。
関連リンク
参考資料
※本記事は、2026年10月時点の公開情報をもとに、医療渡航の受入れ体制に関する一般的な情報と当社の考えをご紹介するものです。個別のオンライン相談・診療を実施できるかどうかは、提供内容、日本および対象国の法令、患者様の状況などを踏まえた確認が必要です。
インバウンド医療の受入れを検討されている医療機関の皆様へ
「何から準備すればよいのか分からない」「院内の体制や運用を整えたい」「海外患者様の受入れに伴う実務や連携に不安がある」。そのような場合も、ぜひAJSにご相談ください。
受入れ方針の整理から、相談窓口、情報共有、通訳・翻訳、予約・決済、来日前後の患者様対応、関係機関との連携まで、医療機関の皆様の状況や目指す受入れ規模に合わせて伴走支援します。これから検討を始める段階でのご相談も承っています。